「どうじゃ? ルディーン君。ベニオウの実は堪能できたかな?」
「うん! お外があっつかったでしょ? だからつべたくてとってもおいしかった!」
ロルフさんに聞かれた僕は、とっても美味しかったよって答えたんだ。
だって夕方近くになってるって言っても、まだお空は赤くなってないんだもん。
だからまだとっても暑くって、そんな中を歩いてきたところで冷蔵庫で冷やしたベニオウの実が出てきたでしょ?
そんなの、おいしいに決まってるよね。
「ふむ。それよかった」
ロルフさんは長いお髭をなでながらそう言うと、今度はバーリマンさんにムウ買ってこう言ったんだ。
「ルディーン君も満足してくれたようじゃし、ギルマスよ。そろそろベニオウの皮の分析を始めるとしようか」
「解りましたわ、伯爵」
みんなでベニオウ籾を食べてたもんだから忘れかけてたけど、そう言えば今日はそのためにここに来たんだっけ。
「ペソラ。それじゃあ、先ほど取り分けた川を持ってきて頂戴」
「はい。解りました」
ロルフさんに皮を調べようって言われたバーリマンさんは、ペソラさんにさっきむいた皮を持って来てって。
でね、ペソラさんが持ってきたベニオウの皮を、ロルフさんとバーリマンさんは錬金術のスキルである解析を使って調べ始めたんだよ。
そしたら二人とも、すっごくびっくりしたお顔になっちゃったんだ。
「これはまた……凄いのぉ」
「魔力が多く含まれているだろうとは思っていましたが、まさかこれほどとは思いませんでしたね」
どうやらベニオウの実の皮には、すっごくいっぱい魔力が入ってたみたい。
でもそれがどれくらいなのか、見てるだけじゃ解んないでしょ?
だから気になったお爺さん司祭様が、ロルフさんに聞いたんだ。
「ヴァルトよ。すごいだけではどれほどの魔力が含まれておったのか解らぬではないか。わしはおぬしやギルマスのように錬金術が使えぬのだから、もったいぶらずに早く教えろ」
「おお、そうであったな。実はな、ラファエル。このベニオウの皮に二法されておる魔力量は、重さ換算で言えば魔石並み。いや、もしかするとミスリルなどの魔法金属に匹敵するかもしれぬほどの量なのじゃよ」
これにはお爺さん司祭様もびっくり。
だってミスリルとかの魔法金属って、ちょっと使うだけで武器や防具が魔法の装備になっちゃうくらいいっぱい魔力を含んでるからなんだ。
「それは誠か?」
「うむ。流石に植物の皮じゃから魔石や魔法金属のように汎用性は無いが、ポーションの素材として考えるとこれほど向いているものはないじゃろうな」
ポーションって、材料の中にある薬効に魔力を注いで作るでしょ?
でもこの皮にははじめっからいっぱい魔力が入ってるんだから、ポーションの材料にするにはとってもいいんだってさ。
「フランセン様。という事は、この皮はそれだけでポーションとして使えるという事でしょうか?」
この話を聞いてペソラさんがロルフさんに、それじゃあベニオウの実の皮はそのまんまポーションになるの? って聞いたんだよね。
だけどロルフさんは、ならないよって。
「いや、このままでは無理じゃな」
「何故でしょう? 魔力を十分に含んでいるのでしたら、ポーションとして使えそうですが」
「それはじゃな、このベニオウの皮に含まれている薬効だけでは特にこれと言った効果を出す事ができないからじゃよ」
ロルフさんが言うには、ベニオウの皮っていろんな薬効を含んでるそうなんだよ?
でもね、その全部がそれだけじゃ何のお薬にもならないものばっかりなんだって。
「ペソラ嬢もこの錬金術ギルドで働いておるのじゃから、中級や上級ポーションが複数の薬草から作られる事は知っておろう?」
「はい」
「そのようなポーションはメインとなる薬草と、その薬草に含まれておる薬効の効果を高める薬効を持つ薬草で構成されておるのじゃ」
「なるほど。という事は、このベニオウも荷の皮は、他の薬効の効果を高める成分を多く含んでいるのですね」
ペソラさんが言った事に、ロルフさんは笑顔でうんうんって頷いたんだ。
「その通りじゃ。これがもし傷を治す薬効が含まれておったら、ペソラ嬢の言う通り乾燥させ、それを薬研を使ってすりつぶすだけで粉状のマジックポーションを作る事ができたであろうな」
「そのようなポーションが存在するのですか?」
「うむ。迷宮に出没する魔物の中にはポーションの素材となる角や血、肝の臓を持つ者もいるそうでな、その中でも角は砕くことにより、それだけでマジックポーションとして使えるものもあるそうじゃ」
ロルフさんのお話を聞いて、へぇって感心するペソラさん。
そう言えば物語の中にも、病気になったお姫様を治すために王子様が強い魔物をやっつけに行くって言うお話があるもんね。
ああいうのは、ほんとにそう言う魔物がいるからできたお話なんだろうなぁ。
「このベニオウの皮は、そのようなものと同じように使う事はできぬ。じゃが、普通に流通しておる者の皮を調べたところ、ルディーン君が作った二つのポーションの成分と共通するものが多く見つかっておるのじゃ」
「だからね、ペソラ。先ほど調べた事によりこの皮が想像以上に多くの魔力を含んでいる事が解ったから、これを素材の一つとして使えば私たちでもルディーン君が作った二つのポーションに近いものができる可能性がより高まったのよ」
このベニオウの皮を使えば、もしかしたらお肌つるつるポーションと髪の毛つやつやポーションが作れるかもしれないって、ロルフさんとバーリマンさんは言ってたでしょ?
でね、さっき皮を調べた事で二人とも、これならほんとに作れるようになるんじゃないかなぁ? って思ったんだってさ。
「なるほど。ヴァルトはこれでルディーン君が作った二つのポーションに近いものを作り出せると確信したのだな?」
「いや、残念じゃが、必ずしもそうとは言い切れないのじゃよ」
「何故だ? おぬしは先ほどこの皮に、二つのポーションと共通した薬効が含まれてると言ったではないか」
さっき作れるんじゃないかなぁ? って言ったばっかりなのに、今度は作れないかもしれないなんて言い出したもんだから、お爺さん司祭様はどういう事? って聞いたんだいおね。
そしたらロルフさんは、ちょっと難しそうなお顔でこう言ったんだよね。
「ポーションと言うものは、かなり繊細なものなのじゃよ。それ故に、薬効の配合次第ではまるで効果が出なかったり、副作用が強すぎてまるで使えないものになったりすることもあるのじゃ」
「なるほど。実際に作ってみなければ、それが効果を発揮すると断言できぬと言う訳か」
例えばお肌がつるつるになったとしてもだよ、そのお薬が強すぎて真っ赤になって腫れちゃったり、痛くなっちゃったらそんなポーション使えないよね?
だから成分が全部そろってて、その上魔力がちゃんと入ってても、それが絶対お肌つるつるポーションとおんなじ使い方ができるとは限らないんだって。
「じゃがな、希望が無いわけではない」
「確かに、成分自体はそろっておると言うのならそうであろうな」
「いや、そうではない」
ロルフさんはね、こっちに歩いてくると、僕の後ろから両肩に手を置いてお爺さん司祭様にこう言ったんだ。
「わしとギルマスだけでは、配合比率を見つけ出す事は難しいかもしれぬ。じゃがこの子がいれば。ルディーン君の鑑定解析を使えば成功する確率は大きく高まるのじゃよ」
「そして一度配合比率が確定しさえすれば、私と伯爵の二人でつねにその配合ができるすべを必ず確立させますわ」
でね、今度はそのロルフさんの横にバーリマンさんが並んでこう言うと、お爺さん司祭様に向かってニッコリと微笑んだんだ。
普通の薬でも副作用は怖いですよね?
ましてや効果が劇的に出るマジックポーションで副作用なんてものが出たら、それがどんな事態を引き起こすかなんて誰にも解りません。
なので本当ならこの手のポーションを作る時は、長い年月をかけて実験を繰り返して完成させるものなんです。
でも今回はルディーン君が持つ、鑑定解析なるものがあるんですよね。
これさえ使えば、効果だけでなく副作用の有無さえ簡単に解ってしまいます。
これならラットを使った実験などをしなくてもすぐに効果が解るので、ロルフさんたちは多分成功するだろうなぁと考えていると言う訳です。